確定申告の前後で引っ越しがあった場合の確定申告書の提出先、住所の記載について
〇納税地とは
納税地とは、税に関して納税者が行う申告、各種届出・申請等について管轄を定める基準となる場所です。所得税では、国内に住所を要する場合には、その住所地が納税地とされます。
〇従前の取扱い
所得税・消費税の納税地に異動(例:納税地である住所地を転居に伴い異動 する場合)があった場合には、その納税地の異動があった後遅滞なく、その異動前の納税地の所轄 税務署長に対し、「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書」する必要がありました。
また、特例として、住所地と異なる場所に事業に係る事業所等を有する場合には、住所地の所轄税務署長に「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出することにより、その事業所等の所在地を納税地とすることとしておりました。
〇令和5年1月以降の取扱い
令和4年度税制改正に伴い、納税義務者が納税地を異動又は変更した場合の手続に関して見直しが行われ、異動後及び変更後の納税地については、提出された確定申告書等に記載 された内容等から把握可能であることを踏まえ、令和5年1月1日以後は、 「所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書 」、「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」について、その提出が不要とされました。
納税地の異動又は変更がある場合は、その手続として、異動や変更後の納税地を所得税又は消費税の申告書に記載することで足りるとされました。
〇住民税の住所地
個人の所得に対して課税される所得税と住民税。所得税は国に、住民税は市町村、都道府県に納める税金です。地方に納める住民税は、引越しをした場合、どの自治体に住民税を納めることになるのでしょうか。
住民税の納付先は、その年の1月1日現在の住所地の自治体です。従って、年の途中で引転居した場合、その年の1月1日の住所地である転居前の市町村、都道府県に納めることになります。
〇令和5年の申告書の記載例
ケースA 申告書の提出の前年(令和5年中)に引っ越した場合、所得税申告書の現在の住所と令和6年1月1日の住所(住民税の住所)は一致するので、「同上」と記載します。
ケースB 令和6年1月2日以降に引っ越しをした場合、所得税申告書の現在の住所とと令和6年1月1日の住所(住民税の住所)は異なりますので、下記のように記載をします。
〇住所地と住民票
住所とは生活の本拠をいい、生活の本拠地かどうかと客観的事実によって判定します。一般的には住民票の登録をしている住所が納税地になりますので、確定申告書は原則として住民票のある住所地の所轄税務署長に提出します。
会社員等の給与所得者でも、医療費控除やふるさと納税等の寄附金控除を受ける場合などは確定申告をする必要があります。基本的には住民票のある住所地と現住所は一致しますので、確定申告書の提出先を迷うことはありません。
しかし、引越しや転勤などで住所が変わったにもかかわらず、住民票異動の手続きをしていないため、住民票に記載されている住所と現住所が異なることがあります。
このような場合は、住民票のある住所地と現住所のどちらに確定申告書を提出すればいいのか疑問が生じますが、現住所の所轄税務署長に確定申告書を提出すればよいことになっています。
また、住民票のある自治体からも住民税が課税され、二重課税となるのではないかとの心配もあるかもしれませんが、住民登録がない人からの納税を受け取った自治体は、当人の住民登録がある自治体に納税を通知するよう定められており、通知を受け取った住民登録している自治体は、その人に住民税を課税してはいけないと地方税法で定められています。従いまして、住民税が二重課税となることはありません。