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相続発生・死後事務対応のスケジュール④

周 奎植税理士事務所

相続発生・死後事務対応のスケジュール解説 第4弾です。
今回の内容をより深くご理解いただくために、ぜひ前回の内容も併せてご確認ください。

(3)相続発生後速やかに行う手続き

④金融機関への連絡

a.連絡方法
口座名義人が亡くなると遺族は金融機関に連絡をする必要があります。連絡には法的な期限などはありませんが、連絡を長期間しなかった場合、特定の相続人等が預貯金を私的流用することによりトラブルとなるなどの可能性が生じます。
金融機関への連絡方法は、各金融機関に応じて異なりますので事前に確認が必要となりますが、大きく分けて以下の方法となります。

事例対象金融機関
被相続人の取引店又は最寄りの店舗に来店又は電話をするみずほ銀行、りそな銀行、ゆうちょ銀行、野村證券など
相続専用のセンターに電話をする三菱UFJ銀行、楽天銀行など
WEBから申し込みをする三井住友銀行など



【具体例(ゆうちょ銀行の場合)】

(A)相続の申し出
「相続確認表」に必要事項を記入し、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に提出します。被相続人の貯金等の現存調査を行う場合は、「貯金等照会書」をあわせて提出します。なお、ゆうちょ銀行で投資信託の取引を行っていない場合、相続WEB案内サービスを利用することが可能です。相続WEB案内サービスを利用することにより、(A)~(C)の手続きをまとめて郵便局の貯金窓口で行うことができます。

(B)「必要書類のご案内」の受取り
相続の申し出後、 1~ 2週間程度で「必要書類のご案内」が指定した住所に郵送されます。また、「必要書類のご案内」には、「貯金等相続手続請求書」、「委任状」が同封されています。相続WEB案内サービスを利用する場合は、WEB上で必要書類の確認ができます。

(C)必要書類の提出
必要書類を準備し、相続確認表を提出した貯金窓口に提出をします。相続WEB案内サービスを利用している場合は、必要書類の提出と同時に相続確認表を提出します。

(D)相続払戻金の受取り
必要書類を提出してから1~ 2週間程度で代表相続人の通常貯金口座への入金などにより相続払戻金を受け取ります。

b.口座の凍結
死亡の連絡をした場合、預金口座が凍結されてしまうためタイミングには注意が必要です。口座が凍結されると公共料金等やクレジットカードの引落しがされません。また被相続人が個人で不動産賃貸業を行っていた場合、賃借人等が家賃の振込みをすることができなくなるため、遺産分割協議が成立するまで相続人代表の口座に家賃を入金してもらうなどの対応が必要となります。
なお、死亡の連絡をしていない場合でも、新聞のお悔やみ欄や相続人等が窓口で被相続人の口座から引出しを行った場合などに亡くなったことが把握され、口座が凍結される可能性もあります。

c.遺産分割前の相続預金の払戻し制度
相続により預金口座が凍結された場合、相続人全員の合意なしに相続人が単独で預金の払戻しを受けることはできませんでしたが、平成30年7月の民法の改正により、家庭裁判所の判断を経ずに一定額まで預金の払戻しを可能とする制度が設けられました。

(A)家庭裁判所の審判を受けないケース
各相続人が単独で払戻しを受けることが可能な金額の上限額は、以下の方法により計算されます。

相続開始時の預金額(口座・明細ごと)× 1/3× 払戻しを行う相続人の法定相続分

ただし、同一の金融機関につき上限が150万円として設定されています。
このケースにより払い戻された預貯金は、払戻しを受けた相続人が相続したものとして扱われます。

【手続きに必要な書類】

 一般的に必要な書類追加で書類が必要となる場合
(i)被相続人の出生から死亡までの除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書※・直系尊属が相続人となる場合
被相続人に子や孫がおり既に亡くなっている場合は、亡くなった子や孫の出生から死亡までの除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書※

・兄弟姉妹が相続人となる場合
上記直系尊属が相続人となる場合に必要な書類に加え、被相続人の父母の出生から死亡までの除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書※

・代襲相続人がいる場合
被代襲者の出生から死亡までの除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書※

相続放棄をした相続人がいる場合には、相続放棄申述受理証明書等も必要となります。
(ii) 相続人全員の全部事項証明書※
なお、被相続人の戸籍謄本等で確認できる場合は不要
・代襲相続人がいる場合
 代襲相続人の全部事項証明書※
(iii) 預金の払戻しを希望する相続人の印鑑登録証明書
(iV)本人確認書類 

※法定相続情報一覧図の写しにより代替可能

(B)家庭裁判所の審判を受けるケース(預貯金債権の仮分割の仮処分)
家庭裁判所に遺産分割の審判または調停の申立てがある場合に、各相続人は家庭裁判所に預貯金債権の仮分割の仮処分の申立てを行うことにより、家庭裁判所が仮取得を認めた金額の払戻しを受けることが可能です。ただし、各相続人に権利行使の必要性があり、かつ他の共同相続人の利害を害しない場合に限ります。
このケースでは、払い戻された預貯金は仮取得であるため、払戻し金額も含めて遺産分割の審判または調停が行われます。

【手続きに必要な書類】

(i)家庭裁判所の審判書謄本(確定表示がない場合は、審判確定証明書も必要)
(ii)預金の払戻しを希望する相続人の印鑑登録証明書
(iii)本人確認書類



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