相続発生・死後事務対応のスケジュール③

相続発生・死後事務対応のスケジュール解説 第3弾です。
今回の内容をより深くご理解いただくために、ぜひ前回の内容も併せてご確認ください。
(3)相続発生後速やかに行う手続き
①生命保険金の請求手続き
相続の開始後、生命保険金を受け取るためには保険金受取人による死亡保険金の請求や法定相続人による入院給付金などの請求が必要となります。そのため、被相続人の保険の加入状況を保険証券や、通帳の履歴、郵便物、確定申告書などにより把握する必要があります。なお、令和3年7月1日より生命保険契約照会制度が創設され、生命保険協会を通じて被相続人の契約の有無を照会できるようになりました。
死亡保険金の請求や個人年金受給権の承継ですが、死亡保険金や個人年金受給権は相続財産ではなく、受取人固有の財産となります。したがって、遺産分割協議の成立を待たずに請求・承継をすることができ、仮に受け取った場合であっても相続放棄をすることができます。
また、生命保険金の受取人が被保険者よりも先に死亡している場合、受取人の変更をしていなければ、保険約款や遺言書にもよりますが、一般的に死亡した受取人の相続人が受取人となります。そして、受け取る保険金の額は法定相続割合ではなく、相続人の頭数に応じて均等に按分した金額となります。
請求先 | 生命保険会社 |
請求期限 | 死亡した日の翌日から3年以内 |
請求・承継可能な人 | ・死亡保険金:保険金受取人 ・入院給付金:法定相続人の代表者 ・個人年金受給権:後継年金受取人(指定がない場合は、法定相続人) |
提出書類 | 保険金支払い請求書 |
添付書類など | ・保険証券 ・死亡診断書または死体検案書のコピー ・受取人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等) ・医師の証明書(入院給付金などの場合) ・保険会社や死亡原因などに応じて、受取人の戸籍謄本や印鑑登録証明書 が必要となる。 |
②公共料金、携帯電話、インタ-ネット、NTTの固定電話の解約または変更
a.公共料金の解約または変更
電気やガス、水道、NHKなどの公共料金の手続きは、一般的に電話やインターネットで行うことが可能です。口座振替やクレジットカード払いによる支払いをしている場合、金融機関への死亡の連絡やクレジットカードの解約よりも先に手続きをしておくとよいでしょう。
ただし、相続税の申告期限が迫っている場合には、金融機関に死亡の連絡をしないと残高証明書が発行されないため、先に口座を凍結し、支払不能通知が来てから支払方法の変更をするケースもあります。
b.携帯電話、インターネットの解約または変更
携帯電話の解約または変更の手続きは、基本的に契約している通信事業者の店舗窓口などで行います。死亡の事実が確認できるものとして死亡診断書の写しなど、携帯電話本体、手続きする人の運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類が必要です。ただし、携帯電話はデジタル遺産の把握や知人への連絡に必要になることもあるため、早期の解約や処分には慎重な判断が必要です。
なお、死亡による解約の場合、違約金が発生しないことが一般的ですが、相続の開始の日以前の期間の携帯電話の利用料金や、未払の端末代金のうち相続人等が負担する金額は被相続人の債務となります。
また、インターネットの解約または変更の手続きは、電話かインターネットにより手続きを行います。
c. NTTの固定電話の解約または変更
電話加入権の解約をする場合は、NTT(電話116番)に連絡を行い、死亡診断書の写しや戸籍謄本など被相続人の死亡の事実が確認できる書類、手続きする人の運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を提出します。また、レンタル機器がある場合は返却します。
電話加入権を承継する場合は、名義変更申込書(NTT東日本)または電話加入権等承継・改称届出書(NTT西日本)、死亡診断書の写しや戸籍謄本など被相続人の死亡の事実が確認できる書類及び、新契約者の運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を提出します。なお、相続権のない人が遺贈により電話加入権を取得する場合は、承継ではなく譲渡の手続きとなり、遺言書の提出も必要となります。
また、電話加入権は被相続人の相続財産に該当するため、相続放棄を検討している場合は承継手続きを行わないようにしましょう。
③クレジットカードの解約
クレジットカードの解約方法はカード会社によって異なるため、カード会社に手続方法を確認する必要があります。電話だけで解約が可能な場合もありますが、死亡診断書の写しなど契約者の死亡の事実が確認できる書類が必要となる場合もあります。
解約時の注意点として、公共料金などの支払いをクレジットカード払いにしている場合には、解約前に支払方法の変更をするように伝えておきましょう。また、被相続人がクレジットカードの本会員の場合、解約により家族カードやETCカードも自動的に解約されてしまう点にも注意が必要です。
なお、被相続人の相続の開始後に相続人等が支払ったクレジットカード利用料のうち、利用日が相続の開始の日以前のものは被相続人の債務となるため、手続きの際に利用明細を取得しましょう。
次号、相続発生・死後事務対応のスケジュール④へ続きます▶▶