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相続手続きの第一歩!相続人の確認④

周 奎植税理士事務所

相続手続きの第一歩!相続人の確認 第4弾です。
今回の内容をより深くご理解いただくために、ぜひ前回の内容も併せてご確認ください。

(5)限定承認

相続では、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金など)も引き継ぐことになります。 もし、相続財産の中にいくらかの価値のある財産がありつつも、借金がどれくらいあるか分からない、といった場合に役立つのが「限定承認」です。


<限定承認とは?>
限定承認とは、「相続で得たプラスの財産の範囲内で、借金を清算する」という方法です。
例えば、相続財産が500万円ある一方で、借金が700万円あるとします。 この場合、限定承認をすれば、500万円の範囲内で借金を返済し、それ以上の債務を背負うことはありません。

<限定承認の注意点>
限定承認は、いくつかの重要な条件があります。

① 相続人全員での申述が必要
 限定承認は、相続人全員が共同で家庭裁判所に申し立てなければなりません。一人でも「単純承認」(プラスもマイナスもすべて相続する方法)を選んだ人がいる場合、限定承認はできません。

② 3ヶ月の期間内に手続きが必要
 相続放棄と同様に、相続が始まったことを知ってから3ヶ月以内に申し立てる必要があります。この期間内に財産や借金の調査が間に合わない場合は、裁判所に申し出て期間を延長してもらうことも可能です。

<税務上の注意点(準確定申告)>
相続財産の中に、売却すれば利益が出るような財産(不動産など)が含まれている場合、限定承認をすると、税金が発生することがあります。
これは、所得税法により、相続人がその財産を「亡くなった方が時価で売却したもの」とみなして計算するためです。
また、準確定申告(亡くなった方の所得税の申告)の期限は、相続開始から4ヶ月以内です。相続放棄や限定承認の検討のために期間を延長しても、この準確定申告の期限は延びません。 もし申告を怠ると、延滞税が発生する可能性がありますので、特に注意が必要です。

(6)特別代理人の選任

お子様や未成年のお孫様が相続人となる場合、相続の手続きをどう進めるべきか悩まれる方が少なくありません。
未成年者は、法律上の行為を自分一人で行うことができません。そのため、通常は親権者が代理で手続きを行います。しかし、以下のようなケースでは、親権者が代理を務めることができず、「特別代理人」の選任が必要になります。

<特別代理人が必要なケース>
これは、未成年者と親権者の間で利益が対立する場合(利益相反行為)に当たります。

親権者自身も相続人である場合
 親権者と未成年者で遺産を分ける際、親権者が自分に有利な分割案を提案する可能性があります。

親権者が同じ複数の未成年者がいる場合
 例えば、親権者である親が亡くなり、未成年のお子様が2人以上いる場合です。親は、それぞれの未成年者にとって公平な代理を行う必要がありますが、利益が対立する可能性があるため、特別代理人が必要となります。

このような場合、家庭裁判所に申し立てて、特別代理人を選任してもらいます。特別代理人は未成年者の利益を守るために、遺産分割協議などの特定の手続きについてのみ、代理権を持ちます。

<特別代理人選任のポイント>

未成年者ごとに選任が必要
 複数の未成年者がいる場合は、未成年者一人ひとりについて特別代理人を選任しなければなりません。

候補者の適格性
 親族を候補者とすることも可能ですが、家庭裁判所がその関係性や利害の有無を判断します。候補者が不適任と判断された場合、弁護士などが選任されることもあります。

遺産分割案への注意
 家庭裁判所は、未成年者にとって不利な内容の遺産分割案は認めません。少なくとも、未成年者の法定相続分を確保した分割案であることが求められます。

<申立てに必要な書類>
特別代理人選任の申し立てには、以下の書類が必要です。

特別代理人選任申立書
未成年者及び親権者または未成年後見人の戸籍謄本
特別代理人候補者の住民票または戸籍の附票
利益相反に関する資料(遺産分割協議書案など)※
利害関係人からの申立ての場合は利害関係を証する資料

※家庭裁判所は、未成年者にとって不利な遺産分割案だと判断した場合、申し立てを受理しない可能性があります。  一般的には、少なくとも法定相続分を相続させる分割案であることが求められます。

<特別代理人と未成年後見人の違い>
未成年者が相続人になった場合、特別代理人ではなく未成年後見人が必要になるケースもあります。

特別代理人:特定の行為(遺産分割協議など)の代理権を持ちます。
未成年後見人:未成年者の両親が亡くなっているなど、親権者が不在の場合に選任されます。
        未成年者の財産全体を管理し、生活全般の面倒を見る権限を持ちます。

相続対策として、お孫様と養子縁組をするケースがあります。この場合、養子となったお孫様の親権は実の親から養親(祖父母)に移ります。養親が亡くなったとしても、親権が実の親に戻るわけではありません。したがって、親権者が不在となり、未成年後見人の選任が必要になりますので注意が必要です。未成年後見人は、未成年者が成人または婚姻、死亡あるいは別の養親ができるまで後見されることとなります。




限定承認は、相続放棄や単純承認と比べて複雑な手続きが必要となります。 未成年者の方の相続についても同様です。ご自身の判断だけで進めるのが不安な場合は、ぜひ専門家である当事務所にご相談ください!
個別の状況に応じて、必要な手続きや書類についてサポートいたします!


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