相続手続きの第一歩!相続人の確認②

(2)戸籍法の改正
相続手続きに欠かせない戸籍ですが、その法律や制度は時代とともに変化してきました。これまでの主な戸籍法の改正を振り返り、現在の戸籍制度がどのようにして作られてきたのかを見ていきましょう。
①戸籍法の歴史と主な改正ポイント
<明治から昭和にかけての大きな転換期>
戸籍の歴史は古く、日本の戸籍制度は明治時代に始まりました。特に大きな転換点となったのが昭和23年の戸籍法全面改正です。
◆「家」単位から「夫婦」単位へ
それまでの戸籍は、家長(戸主)を中心とした「家」を単位としていました。しかし、この改正により、戸籍の単位が「一組の夫婦と、その夫婦と同じ姓を持つ子ども」へと変わりました。これは、家督相続が行われる旧民法から、個人の尊重を重視する現在の民法へと変わったことに伴うものです。この改正で作成された戸籍は「昭和改製原戸籍」と呼ばれています。
<コンピュータ化と個人情報保護の強化>
昭和の改正後も、戸籍制度は現代の社会に合わせて進化を続けています。
◆平成6年:戸籍のコンピュータ化
紙の台帳で管理されていた戸籍が、コンピュータで作成・管理されるようになりました。この際に新しく作られた戸籍は「平成改製原戸籍」と呼ばれています。
◆平成19年:個人情報保護の強化
個人情報保護の観点から、戸籍の公開制度が見直されました。他人が戸籍の交付を請求することが厳しく制限され、プライバシー保護が強化されました。
◆平成25年:戸籍副本データ管理システムの導入
法務省が全国の戸籍の副本データを管理するシステムを導入しました。これにより、戸籍の安全性が高まり、その後の広域交付制度につながる基盤が作られました。
相続手続きでは、これらの改正前の戸籍(原戸籍)をさかのぼって取得することが必要になる場合があります。戸籍をたどることで、相続人の確定に必要な情報を正確に把握できるのです。
【被相続人 (父)の生い立ちと必要な戸籍謄本の例】
必要な戸籍謄本 | |
昭和8年 出生(戸主:曾祖父の戸籍に入籍) 昭和22年 祖父の家督相続 | 除籍謄本 (戸主=曾祖父) |
新戸籍編製 | |
昭和31年 父の結婚(母が祖父の戸籍に入籍) 昭和32年 長男(相続人)の出生(長男が祖父の戸籍に入籍) 昭和35年 昭相32年法務省令による改製 | 改製原戸籍 (戸主=祖父) |
新戸籍編製 | |
昭和55年 長男の結婚(父の戸籍から除籍) 平成10年 平成6年法務省令による改製 | 改製原戸籍 (筆頭者=父) |
新戸籍編製 | |
令和5年 父の死亡 | 全部事項証明書 (筆頭者=父) |
②戸籍の取得がさらに便利になりました!
令和6年3月1日から、戸籍法が改正され、戸籍の取得方法が大きく変わりました。 これにより、相続手続きなどで必要となる戸籍の収集が、これまでよりずっと簡単になります。主な改正点は以下の2つです。
1. 全国どこの役場でも戸籍が取得できるように
これまで、戸籍謄本は、本籍地の役所でしか取得できませんでした。しかし、この改正によって、ご自身やご両親、祖父母など、直系のご家族の戸籍であれば、本籍地以外の全国どこの役場でも請求できるようになりました。
例えば、「本籍地は遠く離れた北海道にあるけれど、自分は大阪に住んでいる」という場合でも、大阪の役場で戸籍謄本を取得することが可能です。遠方への郵送手続きなどが不要になり、手続きの負担が大きく軽減されます。
前回コラム「相続手続きの第一歩!相続人の確認①」にも詳しく掲載していますのでご確認ください☝
2. 電子データでの戸籍証明書の発行が可能に
紙の戸籍謄本の代わりに、電子データでの戸籍証明書(戸籍電子証明書)が発行できるようになりました。
この「戸籍電子証明書」は、16桁の識別番号として発行されます。この識別番号を、パスポートの申請など、各種行政手続きの際に提示すれば、紙の戸籍謄本を提出する必要がなくなります。
これにより、手続きのオンライン化が進み、さらに便利になります。
相続手続きや戸籍収集についてお困りのことがございましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。
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